沖縄の沼で魚獲り用ワナを仕掛けると、ザリガニの代わりに何が入るのか?

子供の頃、ワナを仕掛けて魚やザリガニを採ったりして遊びませんでした??

僕はやりました! 小学生くらいのころ、スーパーファミコン&Playstation全盛期に、僕はゲームそっちのけで、近所の川でそんな事ばかりやってました。 実は親には何度も「ゲーム機買ってあげようか…?」と言われていたのですが、そんなら水槽もう一本買ってよ!というほど、昆虫や水の生き物なんかに夢中でした。

ちなみにクラスの女子は引いてましたよ。ええ。 思えば、今はいい時代になったと思います。「生物屋」というのが子供社会でもそれなりの地位を築けるようになった雰囲気があります。まぁモテはしないでしょうが(笑)。

魚獲り用「ワナ」というのは、僕にとってそんな子供時代のノスタルジーの象徴的な存在なのです。さて、いつまでも僕のトラウマをえぐっていてもしょうがないので本題に入りましょう!

「ワナと外来魚」という秀逸なタイトルに惹かれ、イベントに参加してみる

沖縄県は沖縄市、「こどもの国」の敷地中には、巨大な池があります。 ここで開かれたイベントのタイトルが「ワナと外来魚」。もうヤバいですね。完全に僕のような”人種”を釣りにかかってるとしか思えない。 わな集合場所の写真 「わな集合場所」 いきなり不安がよぎります ここか?どう考えてもここだよね?

子供とイベント指導者
食い気味でワナの説明にリアクションする男の子 (本人と親御さんに掲載許可いただいてます。曰く、「俺を載せろ!!」だそうです)

良かった、ここでした。

参加者は親子連ればかり。まぁ普通に考えればそうですよね(汗) 解説をしているTさんという方ですが、子供達に「僕のことは”トンボ”と呼んでね」と自己紹介して「ぽっちゃりなのにどこがトンボか!!」というツッコミをもらってました。後で知ったのですが、トンボがご専門の学芸員さんなんですね。あっちゅう間に子供たちに囲まれる人気っぷり。凄腕です。

ワナ2種の写真
ワナ2種

今回、イベント主催者の方が事前に仕掛けてくださったワナは2種類。

大きい方が「カニ網」小さい方が「もんどり罠」と呼ばれる種類のもの。ちなみにカニ網の方は厳密には、公の水域で使用するに当たっては漁業権が必要なので注意。 というわけで子どもたちに混じって、ワナを回収に行ってきました。

罠引き揚げの瞬間の写真
Tさんが罠を引き揚げます

罠引き揚げの一瞬。これが一番ワクワクしますね!すでに子どもたちが最前線を陣取っているので遠くからしか撮れない(笑) 

こういう池で魚獲り用のワナを仕掛けて何がかかるかは、地方によって、水域によってまちまちです。 僕が子供の頃近所だった横浜市内のとある池では、「モツゴ」が主なターゲットでした(モツゴ-Wikipedia)。他にはザリガニやヌマエビ類、陸封型のヨシノボリ類や、外来魚のブルーギル、タイリクバラタナゴ、時にヤリタナゴなどが捕れました。 このような形のワナに入る魚は基本的に草食性や雑食性の魚やエビ類が多く、動いている餌にしか食いつかないタイプの肉食魚などは捕れません。

ワナから獲物を取り出す所の写真
ワナにむらがりテンションMAXの子どもたち

ちょw君ら前が見えんて(笑)いやもちろん、彼らが主役のイベントです。僕のようなオッサンはついでなのです。

コンジンテナガエビの写真
後ろの方から換算60mmのレンズで頑張って撮っているので、こんな写真になるのはご勘弁を!

出ました!コンジンテナガエビ。沖縄で、いや日本で一番大きくなるテナガエビです。 こいつが「もんどり罠」にも「カニ網」にもけっこうな数かかっていました。もう子どもたち大はしゃぎ。 Tさんは外来魚の説明に進もうとしますが(本当はこっちがメイン)、子どもたちは容赦してくれません(笑)わかるよ、テナガエビかっこいいもんね!!

コンジンテナガエビとは

テナガエビ類はその名の通りたいへん長〜いハサミを持ったエビの仲間で、長い種類では全長の半分をハサミが占めます。オスはとくに長いハサミを持ちます。 和名「テナガエビ」と呼ばれる本家本元のテナガエビは日本の本州にも広く分布していますが、南に行くほど種類が多くなり、沖縄を含む南西諸島には15種が生息しています。沖縄はテナガエビパラダイスと言っても差し支えない場所なのです。 で、その中でも最大になるのがコンジンテナガエビという種類。沖縄の言葉で「タナガー」と呼ばれ、ハサミを含めるとオスは35cmを超えるかという大型種。沖縄ではそれこそ「ザリガニのいそうな」池や沼で見られます。 ただしザリガニと違って、ほとんどのテナガエビ類は淡水で繁殖することができません。卵からかえったテナガエビの幼生は一旦海に下り、少し育ってから川を遡って生息地にたどり着きます。ということは、テナガエビ類がいる池は、一見そうは見えなくても海と繋がっているということ。 マニアックなネタですが、テナガエビの”ハサミ”は前から数えて2対目の脚(第二歩脚)なのに対し、ザリガニの”ハサミ”は1対目の脚になります。

テナガエビのハサミの図解
※写真は、別の日に川で撮ったヒラテナガエビ(♀)

ほらね!!(ドヤ顔) これはテナガエビが特別なわけではなく、むしろ変わっているのはザリガニの方。 一般にはザリガニはエビの仲間とされていて、それも間違いではないのですが、より厳密に言うとザリガニは一般的なエビ(クルマエビやブラックタイガー)よりはヤドカリやカニに近い生き物です。ちなみにロブスターもがっつりザリガニと同じ仲間です。

沖縄の淡水でワナをかけると、たいていは外来魚がどっさり

外来魚の方いきましょう。

ワナにかかったティラピアの写真
ワナにかかったティラピア

はい大漁!

捕れたのはすべてティラピアというお魚。 この魚はアフリカ原産の外来魚で、沖縄の河川ならほとんどどこでも見られます。 原産地では非常に重要な食用魚で、日本にもはじめは食用として持ち込まれました。スーパーでまれに「チカダイ」「イズミダイ」という名前で切り身が売られていますが、これはティラピアのことです。チカダイの名前は、学名のOreochromis niloticusのニロチクスから取ったと言われています。どこがタイやねん!

(ちなみに、沖縄に移入されたティラピアにはモザンビークティラピア、ナイルティラピア、ジルティラピアの3種がいて、それぞれが交雑してしまったため、現在沖縄に生息しているもののほとんどは雑種になります)

さてこのティラピアですが、

  • 高水温に強い(40℃くらいでも平気)
  • 雑食性で何でも食べる
  • 気が強い
  • 繁殖力が強い
  • 海水中でもしばらく生きられる

と、外来魚として広がるのに有利な性質をこれでもか!というほど持っています。 口内保育(卵〜生まれてしばらくの稚魚まで口の中で育てる)を行うこともあって、特に繁殖力は圧巻です。 また、海水に強いという性質も脅威で、早い話、誰かが放流などしなくても海に通じている川ならどこへでも侵入することができてしまいます。 そんな訳で、沖縄の都市部の池はどこに行ってもティラピアだらけです。

ティラピアの群れの写真
ティラピアの群れ。小さい小魚もすべてティラピアの稚魚

こんな感じで。

外来魚を駆除するべきかどうかという話はよく議論になります。ただ環境保全の観点から考えると、多くの外来魚は「駆除した方がよい」です。

もちろん外来魚に罪なんてないわけですが、そこにもともと生息していた生物が外来魚に喰われていなくなる、という事態は避けねばなりません。なぜかということを説明するのは非常に困難なのですが、非常に大ざっぱに言うと「地球上にいろいろな生物がいるという複雑さ」を守る必要があるからです。

トランプ氏ではないですが、もちろん、人間の場合は話が全然別です。人間対人間と、人間対動物では考え方を分ける必要があります。なぜなら我々は人間だから。同じ理由で、動物愛護と環境保全はごっちゃにしてはいけません。

話がシリアスな方向に行ってしまいましたが、まぁ、実際にティラピアを沖縄から駆除するというのはかなりの無理ゲーだと思います。 僕らが一番簡単にできる事は、これに懲りて新たな外来種をフィールドに持ち込まない事。これに異論のある生物屋はいないはずです。アクアリストの同志の皆さん、虫キーパーの皆さん、気をつけましょうね! …とまぁ、ワークショップのまとめもそんな話になりましたが

スジエビの写真
スジエビが捕れて再びテンションMAXの子どもたち

とにかく、子どもたちの食いつきが凄まじかったのはエビでした。

どうやら大きい小さいは関係ないみたい(笑) でも「ワナ」という装置を通じて身近な自然と触れ合うというのもとても大切な経験だと思いますし、それに大人がきちっと意味付けをするという試みも素晴らしいと思います。 何より、場違いなオッサンの参加を快諾してくださって本当に感謝です。Tさん、他の指導員の皆様、ありがとうございました!

写真は全てPanasonic GH-4 + LUMIX G MACRO 30mm f/2.8で撮影

最後に

これだけは紹介しておかねば。 実は、外来種として世界中でティラピアよりずっとヤバいと恐れられている魚がいます。 コイです。 コイは雑食性な上に非常に大食漢で、小魚や貝やエビ・カニや水草など、何でもお構いなしに片っ端から食い尽くしてしまいます。 もともと日本にも分布する魚とされていますが(※この点については議論がある)、本来は非常に広い河川に住むのに適応した魚です。 これが小さな水域に放たれると、そこに住む生物をあっという間にたいらげて環境を激変させてしまいます。繁殖力がとりたてて強いわけではないですが、もともと長寿な上に、大型になると天敵がいなくなり、非常に長生きします。 コイを人為的に放流した水域ではよく「そしてコイしかいなくなった」という笑えない話を聞きます。 「コイを放さないで」バナー コイは非常に見栄えのする魚ですが、安易にコイを放すことは生態系の崩壊と希少種の減少を招くことがあります。気をつけましょう…!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です